数が質に変わる(その一)

私は大学で経営学を専攻、ゼミは会計学、卒論テーマは“TOB(テイク・オーバー・ビット)”でした。今でこそ誰もが知っているTOBですが、当時、今から35年ほど前はほとんどの人は知らなかったと思います。20歳後半、日本中がバブルに酔いしれていました。私は株式投資に興味がありましたから熱中し、その延長線でマンション投資に手を伸ばし、相当派手にやりました。ただ、バブルが終わった時、一体あれは何だったのか?自己啓発もせず(仕事は真面目に頑張っていました)、いつも株式新聞と不動産雑誌を見て、休みの日は証券会社か不動産会社に入り浸りでした。お金はあっても教養が無いことに気づき悩んでいた丁度その頃、兵庫県赤穂にいる友人が骨董品の商売をするので何か買ってくれというので、湯呑を一個1万円で買ってやりました。勿体ないと思いながらも毎日使っていると段々愛着が湧き”備前焼“をもっと深く知りたいと思うようになり、専門書を読み、VTRで知識を増やし、銀座の画廊を隅から隅までのぞき、百貨店の画廊も手当たり次第みました。とにかくを沢山見ました。そうすると自分の目が次第に肥えてきます。どんな作家が人気があるか、売れ筋はどれか、全国の窯元をめぐり、作家や陶商と親しくなり作品を頂いたこともあります。何人かとは年賀状のやりとりなど交流が始まりました。