事業領域を明確にする

大学を卒業して入社した会社(小売業)は、「会社の数字をバランスシート(B/S貸借対象表)でみよ。損益計算書(P/L)だけではダメだ」とよく言われました。P/Lではいくら使って、幾らの利益を得たことしかみることはできません。連結で見よと言っていたのです。経営とは一方で資金の源泉と活用の所産です。活用とは、どこにそのお金が使われているかを見ること。つまり、投資対収益を見ることです。親会社、子会社の関係も連結でみないと分りません。小売業は、利益だけで経営を考えれば本当に僅かです(利益率5%もあればいい方です)。悲しいくらいの数字です。一瞬のうちに莫大な利益を得られる金融派生商品などに手を出したくなります。しかし、これは、事業活動でなく、投機行為です。汗水流して製造した「製品」を輸出する際、その製品の利益よりも、円高、円安の為替差益で一喜一憂しなければならないほど情けないことはないでしょう。昨今、企業を取り巻く環境をみると「企業の存在価値」「社会的存在意義」とは何かを問われています。アメリカ流株主利益至上主義が何を生み、何を失ったか。株主という投機家のために、短期の利益確保に走り、経営者は長期的視野を失い、人と利益を食いつぶしているように見えます。お金は経済活動を促進し、人はその活動の根幹でなければなりません。お金と人が商品となる時代は不幸です。