.『踊る大捜査線』にみる組織とリーダーの醍醐味(その四)

※事件は現場で起きている!

2003年ヒットした映画の二作目(レインボーブリッジを封鎖せよ!)では、連続殺人事件が起きて、湾岸署に特別捜査本部が設置され、本庁の女性管理官沖田(真矢みき)が本部長として着任します。

一作目では、会議室にいたまま臨機応変に対応しない警察首脳部に向かって、

青島が「事件は会議室で起きているのではない!現場で起きているのだ!」

と叫ぶ場面が話題になりましたが、この女性管理官は青島に会うなり、

「事件は現場で起きているんじゃないのよ。事件は会議室で起きているの。勘違いしないで」とクギを刺します。

絵に描いたようなピラミッド組織型のリーダーで、上昇志向の塊のような設定になっていました。

手柄を立てて、自分の地位を遮二無二上げていこうとする人間はとかく頑張りすぎてテンパってしまいます。

特に女性には多いのではないかということで、女性の本部長を登場させたのでしょう。この女性管理官は事件発生から三日間、一回も寝ないのです。

休む姿を見せたくない。寝てないからどんどん疲れる。犯人が捕まらない焦りも加わって的確な判断ができなくなり、ますます高圧的になる。よくある上昇志向型のリーダー像です。

※今、話題(安倍ちゃんの女性の活用)の女性管理職です

上昇志向型の女性リーダーが単なるヒステリーに見えてしまったようです。

実際、女性雑誌などでは不評でした。本当はそうでなくても、組織がテーマである以上、男性と女性とで見方が違うところもあるし、世代によっても捉え方が違ってくるのは当然かもしれません。確かに見る人の置かれたポジションによって、ずいぶん違うようです。

『THE MOVIE 2』も、私と息子では感じ方が違っていましたね。

ストーリーは、それぞれ会社をリストラされたバブル世代が集まって、恨みから不特定の会社役員を次々に殺害していく犯人グループと、警察組織との対決という構図です。既存の犯人像にとらわれて捜査は後手に回る。

ついには現場で、すみれが犯人に撃たれたところで、女性管理官の対応能力は限界に達し、本部長が室井管理官(柳葉敏郎)に代わります。

警察組織を変えたいという思いを抱く、青島の“同志”です。

キャリアであるため組織の論理にも巻き込まれていかざるをえないところがあり、揺れ動く存在として描かれる人物です。

室井は捜査を立て直そうとします。事件の舞台は、新しい建物や道路が次々できて一ヶ月もすれば街の姿が変わるお台場です。

犯人は地図にない現場に隠れていると考え、最近建てられた地図に描かれていない場所の情報を挙げてくれと、一同に訴える。

この時、「本庁と所轄の別は問わない、階級や役職は忘れてくれ、自分の判断で動いてくれ」と言い放ち捜査本部のあり方を180度変えます。

この場面を組織論的にいうと、階層がきっちりあって、現場にいる末端の人間には上から言われたとおりに行うよう求める官僚組織から、基本の原理原則は共有しながら現場に自発性と自由裁量を持たせる自律組織にきりかえた

その結果、街の隅々まで知っている所轄の刑事、婦警、事務職員までもが進んで地図に描き込んでいく。世のお父さん世代は、みんなが描き込みながら組織が一つにまとまっていくこの場面に爽快感を感じたと思います。

でも若い世代はちょっと違う。その前段で、すみれが撃たれたことに怒った青島が室井に、「どうして現場に血が流れるんだ!」と憤懣をぶつける場面に共鳴した