『踊る大捜査線』にみる組織とリーダーの醍醐味(その五)

※この映画は、中高年が感動する映画だと思いました。

わたしは明らかに前者で、この映画はみんなで地図を作ることが大事なんだということが言いたいのだ。と思ったほどです。

それは、わたしも社会人のはじめは現場にいたけれど、その後は現場との距離が大きくなって、全体を見なければならない管理職の立場になったからだと思います。

組織がテーマだと自分の立場とオーバーラップする部分も結構あります。

確かに35年前に社会人になりましたが、入社から2年間は、わたしは会社では青島のポジションでした。現場で戦っているのはおれたちだ。皮膚感覚がわからない人間から遠隔操作でああでもない、こうでもないと言われたくない、黙ってそこに座っててくれという感じでした。

それが、翌年、入社して3年目にわたしが管理職の立場になり、段々室井の心境が分かるようになってきた。

正直、『THE MOVIE2』は室井の映画だよなって気がして、『もっと室井を出してくれ!』って叫んだほどでしたね。

※「踊る」が世代を超えて人気がある理由

(その二)の「事件に大きいも小さいもない」という話がありました。

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管理職としてより大きな絵を描くとなると、正義や理想はそうであっても、大きい仕事のほうを優先せざるを得ない面があることが分かってきます。

持ち場が変われば違う世界が見えます。

現場には現場の仕事観、上には上の仕事観があります。

だから、正義や理想は青島やすみれが語るべきで、室井が口にすると、どこか嘘っぽく映ります。それでも自信なげに語らせるのですが、そこに漂うのは虚無感だけです。それは今のわたしには分かります。

テレビシリーズの方で、政府高官の息子がひったくりで捕まった時、上層部からもみ消しを指示された室井に「捜査に政治を持ち込まないで」とすみれが反発し、これに対して室井が、「私はその政治をしに来たのだ」と言い返す場面がありました。

この台詞は凄くしびれます。室井はお前らも理屈を言え、おれも言う、そのバランスをとるのが政治なのだと言おうとしたんだと思います。

政治の本質を突いていました。すみれにはそれがわからない。

組織の理想か現実か会議室か現場かピラミッド組織か自由裁量度の高い組織か、強力なリーダーか末端の自主性か…。『踊る』が若い世代だけでなく、我々中高年世代から観ても面白いのは、現実の企業組織が抱える今日的な課題をと。例えばトップダウンボトムアップ『踊る』は、基本的には上級職キャリアの下にノンキャリがいるというトップダウンの警察組織に対して、主人公が下からボトムアップの突き上げをするドラマです。ただ、青島も映画の一作目で、一人で被疑者を見つけながら無線で室井に、「命令してくれ!おれはあんたの命令を聞く」と指示を求めていたように、八方破れでいながら、組織の存在を認め、ルールを守っている。彼のなかでもせめぎ合って」いるのです。問題は、なぜ既存の組織が揺らぎ、せめぎ合うようになったかなのです。ピラミッド組織は上に立つ人間は下の人間より正しい答えを持っていることを前提に成り立ちますだから指示命令が出せるこれは環境に大きな変化がなく、マニュアルやルールもよく出来ていて、分業も巧みに行われ、それぞれに責任に応じた権限が与えられていればうまく回ります

ところが、今は環境が目まぐるしく変化している。困るのは、現場にいた人間が偉くなって上に上がったとき、環境が変わったのに現場のことがわかるつもりで指示命令を出すケースです。