『踊る大捜査線』にみる組織とリーダーの醍醐味(その七)

※柔軟な対応が必要、固定概念を破れ!

私たちの仕事の世界でもそうだと思います。

上の人間が下のために環境整備をしてやるかやらないかで、仕事の質や出来上がりは全然違ってくると思います。

その意味では、映画で室井が捜査を立て直すため、それまで捜査の本筋から排除されていた所轄の人間たちに対して、「知っている情報を寄せてくれ、役職や階級は関係ない」と階層の鎖を解き放ち、参加と活躍の場を一気に広げたのは、サーバント・リーダーとしてのひとつの姿と言えます。室井が登場するまで、犯人対警察は、対象的な二つの組織形態も戦いでした。

犯人Gはリストラで解雇された共通の被害者意識を持っていますが、リーダーが存在しない。

何時までにそれぞれがどんなやり方でもいいから何人殺害しようと目的だけを共有し、あとの行動は各自の判断に任せる。

警察が想定し得ない犯人像でした。

警察がタテの指示命令系統で動くピラミッド組織であるのに対し、犯人側はヨコの対等関係で結ばれたネットワークでした。

(リーダーなき「自律分散型組織」の限界)

この犯人グループが何を象徴しているかというと、テロリズムです。

着想のきっかけは「9・11」の同時多発テロだったそうです。

以降、世界的に広がるテロリズムは、オサマ・ビンラディンを捕まえたとしても、それで終わりではなくてテロ行為自体は増殖していく。

そこには共通の被害者意識があり、根底にはイスラム原理主義という思想信念がある。アメリカという国家組織がイスラム原理主義という思想にはたして勝てるのか?

あの頃イラクの混迷も、一方は軍隊というタテの指示命令系統の組織、もう一方は共通の被害者意識と思想心理で結ばれたリーダーなきヨコのネットワークとの戦い。結局、軍隊的な組織では勝てないことを現状は物語っています

『THE・MOVIE2』も同じで、すみれが「軍隊みたいな私たちがかなうわけがないわけね」と嘆くように、女性管理職が指揮する指示系統の組織では、犯人を捕まえられない。青島が「レインボーブリッジ、封鎖できません」を無線で叫ぶ印象的なシーンは、犯人がお台場から逃走するのを防ごうとしても、道路の管轄というタテ割り行政が妨げになる印象的な場面です。すみれも撃たれ、ついに室井が登場して捜査を立て直す。