童謡のこころ

「七つの子」や「青い目の人形」で有名な童謡作家の野口雨情は、なかなか子宝に恵まれず、8年目にようやく女の子を授かったそうです。

彼は、その子を目の中に入れても痛くないほど、可愛がっていました。

ところが、その子が僅か二歳で伝染病にかかり、あっけなく亡くなってしまったそうです。

彼は浴びるように酒を飲み、酔って悲しみを忘れようとしました。

ある日、その子が夢の中に現れました。

彼女は泣いていました。

涙に濡れた瞳を見た時、野口雨情はハッとしました。

「ああ、このままでは、天国に行っても、娘に会わせる顔がない。お父さんは、歯を食いしばって、悲しみに耐えたよ。お前の分まで一所懸命生きたよ、と言えるようになろう…」

それが彼の転機となり、後世に残る多数の童謡が生まれました。

「シャボン玉」も、父の思いを表現した歌です。『シャボン玉消えた 飛ばずに消えた 生まれてすぐに こわれて消えた 風、風、吹くな シャボン玉 飛ばそ…』

「生まれてすぐに こわれて消えた」 

のあたりは、これまで、何か意識されて歌っておられましたか?

実はこの部分は、八年待って生まれたお子様が、僅か二年で亡くなってしまった無念さを、象徴的に描かれているのだそうです。

そう思うと、この歌に親の気持ちの深さを感じさせられます。