きいちゃんの浴衣
インターネットで知り合ったK.Yさんは、石川県小松市の養護学校の先生。
その学校の高等部の「きいちゃん」は、小さい時の高熱が原因で、手足が不自由になっていました。
ある時、「きいちゃん」のお姉さんが、結婚することになりました。
結婚式の出るのを楽しみにしていた「きいちゃん」に、お母さんは「結婚式に出ないでほしい」と言いました。
お姉さんが、肩身の狭い思いをするのでは…と心配したからでした。
………
悲しんでいる「きいちゃん」にY先生は「お姉さんにプレセントを作ろうよ」と言いました。
そして真っ白な布を、夕日の色に染めて、浴衣を縫って、プレゼントすることにしたそうです。
針で何度も指を刺してしまい、練習用の布が血で真っ赤になっても「きいちゃん」は、「お姉ちゃんへのプレゼントだから…」と言って、体を壊すのではないかと、思うくらい一生懸命に縫い続けました。
出来上がった浴衣を、宅急便でお姉さんに送ってから二日後、お姉さんからY先生に電話がありました。
「きいちゃん」と一緒に結婚式に出てほしいというのです。
……・
結婚式のお姉さんは、とても幸せそうでしたが、まわりの人達は、「きいちゃん」を見て、ひそひそ話をしていました。
「やっぱりでない方が良かったかしら」と、思っていた時です。
お色直しから出てきたお姉さんは、なんと「きいちゃん」が塗った、あの浴衣を着ていたのだそうです。
お姉さんは、お相手の方と、マイクの前に立ち「皆さん、この浴衣を見て下さい。手足の不自由な、私の妹が、こんな立派な浴衣を縫ってくれたのです。
妹は私の誇りです・・・」式場は大きな拍手で一杯になりました。
Y先生は、その時の「きいちゃん」の笑顔とお母さんの感激の涙が、今でも忘れられないそうです。