いい噂をききましたよ(その2)

 

10数年前、ペイ・フォワード【原作はPay it forward】という話題になった映画がありまました。

1人の少年が「親切のネズミ算」というアイディアを思いつき、他人から受けた親切行為を、別の3人にしてあげ、その3人もまた、それぞれ別の3人に親切行為をしてあげる。その親切の輪をネズミ算式に拡大させ、社会を良くしていこうとする感動的なストーリーです。

 

英会話の慣用的な挨拶の一つに、  I,ve heard a nice thing abaut you.(いい噂を聞きましたよ)というのがあります。

私達日本人は、どうもこの様な会話を、気軽にするのが余り得意ではないようです。

しかし、いい噂を積極的に言い続けることを試みてはどうでしょうか。

習慣的にいい噂しかしないような人がいますが、例外なく人を引き付ける魅力があります。

漢字では「噂」は「口に尊い」と書きます。「噂をするならGood News」をです。

日頃の暮らしは、悪意やねたみ、嫉というようなものに溢れ、傷つき汚されているように思えることもありますが、その一方で、ささやかな助け合い、善意や愛情、といったもので癒されることも沢山あります。

11歳の少年トレバーは、社会科の授業で「世界を変える為に何ができるか」という課題が出されたことをきっかけに、あるアイディアを思いつきます。

それが「ペイ・フォワード」。親切を受けたらその行為を他の人へ贈ってゆくことで、善意の輪を広げてゆこうというものです。

シンプルかつ奇想天外なこのアイディアは、いつしか複雑な世界に生きる大人たちの心を癒していきます。

親切を受けたらその相手に恩返し=「ペイ・バック」するのではなく、別の誰かに厚意を贈り、善意を先へ広げていく。それが「ペイ・フォワード」のコンセプトなのです。1人から始まった行為でも、常に複数に対して行われれば、善意はネズミ算式に増えてゆく。非常に単純なシステムに思えるのですが、現実の世界でこれを実行するのは難しいでしょう。それは親切を受けた相手が「善意を広げてくれる」と、信じてこそ成り立つものだからです。つまり、現実的には、そんな些細な信頼ですら「成り立たない」ということなのです。

しかし、世の中がもっと単純で善意に溢れていた時代もきっとあったはず。世の中を複雑にしてきたのは我々大人なのです。本作を観て、しがらみ、欲、意地など様々な理由から「ペイ・フォワード」を「実行不可能、もしくは無力な努力」と決め付けている自分に気がつく人も少なくないでしょう。

 

原作者であるキャサリン・ライアン・ハイドは「現実に上手くいくと思わない。でも試してみる価値はある」を話しています。

 

出演者のスペイシーは「映画が提示したアイディアを、どう受け止めるかは、その人次第。家族を助けるだけでもいいんだよ」といいます。

 

レダー監督はこう述べます。「人に何かをしてあげることで、自分も救われるのよ」。

ペイ・フォワード」が大なり小なり世の中を変えていくかもしれない。

 

そう思いたいですね。