万事塞翁(ばんじさいおう)が馬…視点を変えて見る(全3編)その2、その3

その2

上司が部下に、動機付けをするということは、要するに相手の未来に向けて強く動かしたい訳です。

動機付けが「うまい人」は、相手が停滞してしまった時に、「万事塞翁が馬」的な視点を使って、相手をその停滞から解放し、未来に向けて再び動かすことにとても長けています。

ある大学スポーツの監督が、「みんなで優勝しよう!」と力強くメッセージを発信したところ、一人の学生の反発にあったそうです。

「監督、こんな弱小チームが優勝なんて無理ですよ。寝言を言わないで下さい」

監督は切り返しました。

「そうだ、今の実力では無理だよな。でもだからこそ、お前のような、チームの実力を客観的に見ることの出来る、そして、監督に対しても、ハッキリと進言できる人材が必要なんだ。是非力を貸してくれないか?」

この一瞬で、「批判的」とレッテルを貼られることの多かったその学生の態度を、

「チームに必要な力」と捉え直してしまったのである。

かつて私は大型スーパーの人事をしておりました。

そのときの話をいたします。

ある男性社員のことですが、彼が新社員の時、最初に配属されたのは婦人服売り場でした。

華やかそうに見えるやりがいを感じる売り場でした。

ところが、最初の仕事は、売場から上げられてくる大量の「お買い上げいただいた婦人服のお直し商品」を、バックヤードの然るべき場所に移動させることでした。

来る日も来る日も、お直しをバックヤードに運ぶ毎日。ただ運ぶだけの毎日でした。

仕事に意味を見出せずに、塞いだ気持でその作業を繰り返す彼に、マネジャーは、こう言ったそうです。

「君はその作業を通して、この店で誰よりも今の売れ筋に詳しくなれる可能性があるんだぞ」

彼は、その日を境に、仕事に対する取り組みが全く変わりました。

 その3

時に人の「認識如何で」、その人が未来に向けて創造的に動き出すチャンスを拒んでしまいまうことがあります。

「不可能だ」「つまらない」「つらい」自分で認識を、即座に変えることが出来れば良いのですが、なかなか難しい時もあります。

そんな様子が見て取れたら上司の出番です。

部下の認識を、未来に向けて再び動きを作り出すものに変えてしまいましょう。

そんなに難しいことではありません。

相手の見方や行動が、どうしたら未来に向けて肯定的な意味を持つだろうかと、考えればいいのです。

以前、この話を社内研修で話したところ、若手の部下が、『最近モチベーションが上がらない』とか言うんですよ。

普通なら『まずは、目の前の出来ることからやれ』とか言うところです。

でも、今回は『塞翁が馬』の話を使ってアプローチを変えてみました。

『仕事でのモチベーションが、上ろうが下がろうが気にも留めない若手が多い中で、君はそれを上げようという気持ちが君は強いわけだな。下がっていたモチベーションをなんとか上げたという経験は、君が将来、後輩を持った時に、きっと役に立つぞ。それに、何時もモチベーションの高い人間は、低い人間の気持ちがわからないしなあ。さて、どんな風にしたら君のモチげーションを上げることが出来るか考えてみよう』

そう言ってみたのです。

すると、それを聞いただけで、彼のモチベーションは既に少しだけ上がっているように見えました。

まさに『万事塞翁が馬』ですね。

 

さて、みなさんの周りの人の「馬に対する認識」をどのように、変えることができるでしょうか?

また、みなさん自身の認識については如何でしょうか?