「あなたへ」高倉健(全3編)その3

その3

私は、この映画を見ていて、正に、次元は違うかも知れませんが、寅さんの映画を見ているような感動を覚えました。

美しい映像をバックに、善意に満ちた人達の織り成す温かくて切ない日本人の生活が流れていて、しみじみと生きる幸せを味あわせてくれる。

倉橋が、妻の思いが分からなくて苦しんだことを語ると、余貴美子の濱崎多恵子は、「夫婦やけんて、相手のことが、全部分りはしません」

と答えるのですが、自分の不始末を清算するために、保険金を残して消えて行った夫・南原が生きていることを知った、妻の万感の思いを籠めた心情の吐露なのでしょう。

……………

この多恵子の助言で、“救われた”と、別れ際に南原にもらすのですが、

やはり、人間は、人と人の触れ合いを通じて感動しながら生きているのです。

慣れ親しんで、あれほど愛した妻・洋子の故郷への初めての旅路で、

今まで感じたことのないような人生の奥深さを感じて、

妻の深い愛情を実感した倉島の心を、

どこか恥ずかしそうな子供のように、稚拙ささえ感じさせる不器用な演技で、

語り抜いた高倉健は、正に、日本屈指の名優でしょう。

最後になりましたが、

妻洋子を演じた田中裕子さん。昔から、生れながらの天性の女優だと思って注目し見ているのですが、独房でスズメに餌付けする夫を亡くして、歌の尉問で通っていた刑務所で倉橋に見初められて結婚し、倉橋と薄日の様な、つかの間の幸せを噛み締めながら病床に倒れた、どこか、陰のある女性を演じ、正に、感動の名演でした。

今回は、どちらかと言えば、腫れぼったい目をして薄幸の主人公のような謎のある女性像を演じていたように感じましたが、幸せそうな表情をすると実に初々しくて感動するほど美しいのです。

何度か、しっとりとした情緒のある歌う姿を披露していましたが、感動的でした。

…………

高倉健さんが、崇拝して止まない降旗康男監督の素晴らしさは、言うまでもありません。

映画が終了しても観客が、座席に座ったまま、その余韻を楽しんでいました。

まだこの映画をご覧になっておられない方は、お勧めいたします。

尚、大滝秀治さんは、多くの仲間が見守る中、翌年10月に御なくなりました。

ご冥福を心からお祈り申し上げます。

………・・

途中、話が途切れご迷惑をおかけしましたが、これで高倉健さんのお話を終ります。

お知らせ

現在、タイトルを「人事ざっくばらん」ので投稿しておりますが、

昨日から、「ようこそ、ざっくばらん」に変更いたしました。

当初は私のこれまでの人系業務の経験から「人事に関わるお話し」を書こうと思いましたが、「人事」の話は、

単独ブログ「人事を語る」(今週末開設予定)でご紹介することにいたしました。

もし関心のある方がおられましたら、ブログもご覧頂ければ嬉しいです。

それでは、みなさんに 「キュ」