東日本大震災から5年(全8編)その3-2/2

「繭(まゆ)と墓」

金子みすずさんは、大正時代の末期に、彗星の如く登場し、悲運の果てに若くして自殺した天才女流詩人である。

彼女は子供達や宇宙の成り立ちを優しい詩の言葉に託し、大切な心のありかを詠っています。

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「繭(まゆ)と墓」

蚕(かいこ)は繭(まゆ)に はいります、

きゅうくつそうな あの繭に。

けれど 蚕は うれしかろ、

蝶々に なって 飛べるのよ。

 

人は お墓へ はいります、

暗い さみしい あの墓(はか)

 

そして いい子は 翅(はね)が生(は)え、

天使になって 飛べるのよ。  

金子みすず全集より)

 

かつて農家では、カイコが作るマユは、高いお金で売れる絹が取れるので、

「おカイコ様」と言われ、大切に扱われていました。

でも、マユの中で成虫になろうとしているカイコのほとんどは、成虫に成れませんでした。

繭から絹を採る為に、人間によって湯の中で殺されます。

カイコが成虫になる時に、穴を破られたマユは、

絹の糸が切れてしまい、売り物にならないからです。

マユを包む綺麗な糸は、絹として人を包み、

中身のサナギは大切な食べ物として使われていました。

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成虫に成れるのは、次の年の為にタマゴを生む為の、わずかなマユだけです。

こうしてみると、カイコにとってマユは、翅がはえて生まれ変わるための小部屋でもあるし、お墓でもあります。

とても悲しい詩でありますが、カイコと人の子を重ねて、

死んでいった命を優しく見つめつつ、

そしてその永続性をたたえているように思えます。

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この二つの詩(うた)は、

あの世を遠い離れた所というイメージで捉えがちな

死後感を改めて変えさせてくれます。

企業で言えば、長続きする企業にはお客様満足に対する確固たる経営理念があり、

それを代々の人々がつないでいくことにより、企業の永続性を実現している。

そんなことを感じます。

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明日から、2回、「私に任せてください」と題して、被災者救出のため、被爆覚悟で作戦を実施する自衛隊の隊員とその家族のお話をいたします。

ここから、始まります。

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「私に任せて下さい。自分が行きます!」全ての隊員が口を揃えた。

福島第一原発の設備に放水するため、陸上自衛隊のヘリコプター「CH-47」が出動することになった時のことである。

「任せろ!これくらい、たいしたことではないさ」

「今、無理しなくて、いつするんだ!」

被爆覚悟の作戦にもかかわらず、そんな声があちこちから聞こえてくる。

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それではみなさん、素敵な一日をお過ごしください。 「キュ」