東日本大震災から5年(全8編)その7「釜石の奇跡から学ぶ」新聞記事より

子供達は、文字どおり率先避難者となり、周りの大人達の命をも救ったのである。

ただし、この三原則で述べられていることは、多くの子供達にとって受け入れがたいものでもある。

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それまで、「先生の言うことや教科書に書かれてあることは正しい」と教えられてきたのに、いきなり、

「この地図は信じるな!」と言われる。

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混乱を招いてしまうかもしれないが、想定にしかすぎない資料を見て、

安易にそれを鵜呑みにしてしまう人間の弱さに気づかせ、

災害に向かう合う姿勢というものを持たせるのである。

「率先避難者たれ!」も、それまで教わってきた倫理観からすると、

大きく逸脱しているかもしれない。

自分達だけが、助かればよいのか、という捉え方になってしまいがちだからだ。

そこで私は、子供達にこんな話をした。

人間は、いざという時に、逃げるという決断がなかなかできないものだ。

例えば、非常ベルが鳴った時に逃げ出す先生を見たことがあるか。

ベルの意味合いは分かっていても、『ええ、本当に?』と誰もその情報をすぐに

受け入れようとはしない。

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皆が疑心暗鬼になってはいるが、今がその時だとは思えずに、周りをキョロキョロ見ている。

「初着情報の無視」と言うべき、この人間の習性を打ち砕くには、

同じことを意味する二つ目の情報を与えなくてはいけない。

「だから君が逃げるんだ!君が率先避難者になれ!

その状況を打ち砕くのは君なんだ!」すると生徒の表情が少し変わる。

でも想像してみてほしい。非常べルがなった時、最初に部屋を飛び出していくには、非常に勇気がいる。

何だか弱虫でおっちょこちょいのようだし、大抵は誤報で、皆から囃(はや)し立てられながらここへ戻ってこなくてはならない。

けれども、実際に災害が起こると、そういう状況の中で大勢の人が亡くなっていく。

君自身が逃げるという決断をすることで、皆を救うことができるんだ

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そして、逃げるという行為がいかに知的で、自分を律した行動かを言って聞かせるのである

このように、彼らには地震津波の“知識”を与えたわけではなく、防災へ向かい合う「姿勢」を与える教育を行ってきた

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この先どんな事態が襲ってきたとしても、自分の最善を尽くし、生き延びる姿勢を持った子であってはしい。

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そして今回、釜石市にある14の学校の子供達が、それを見事に実行してくれtおかげで、約3000人の命が守られることになったのです。

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明日は、最終回です。

「深々と頭を下げる」

震災後、私が大変感銘を受けたのは、両陛下が被災地を訪ねられた時、

(雑誌で知ったのですが)最初に海に向かって深々と頭を下げられた。

それから、今度は山に向かって、また頭を下げられました。

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なぜ、そうされたのか。私たちはよくよく考えなくてはならないと思います。

人間と自然との、共存共栄を願われる両陛下のお姿です。‥‥‥

それでは、今日も素敵な一日を  「キュ」