感動する色々な家族像(全5話)第2話「父親の宝物」

「父親の宝物」

三年前に親父が死んだんだけど、

ほとんど遺産を整理し終えた後に、

親父が大事にしていた金庫があったんだよ、

うちは三人兄弟なんだけど、お袋も死んでしまい、

誰もその金庫の中身を知らなくてさ・・。

取りあえず、兄弟家族みんな呼んで、その金庫を開けるようにした。

だけど、これがまた頑丈で、なかなか開かないんだよ。

仕方ないから鍵屋を呼んで、開けて貰うことにしたのだ。

ところがその金庫が、なかなか開かなくてさ、

何となく俺たちは子供の頃の話を始めたんだよ。

親父は、昔からすごい厳格で、子供の前で笑ったことも一度もなくて、旅行なんてほんと行かなかった。

子育ても、お袋に任せっきりで、ガキの頃は、マジで親父に殺意を覚えたぐらいであった。

そういうわけだから、一番下の弟が、

「しこたま溜め込んでいるんじゃねえか?」

みたいなことを言い出した。

その後に、真中の弟も、親父が夜中に金庫の前で、

ニヤニヤしながら、ガサガサやっていたのを見たとか、

言ったから、俺もかなり金庫の中身に期待を抱いちゃったんだ。

……………

その時、鍵屋がちょうど「カギ、開きましたよ」と言った。

ワクワクしながら、金庫の前に行き、長男の俺が金このドアを開けたのである。

そしたら、古びた100点満点のテストなんだ。

それを見た一番下の弟が「これ、俺のだ!」と言って俺から取上げたんだよ。

弟はしげしげと、テストを見ていた。

次に出てきたのは、何かの表彰状。

すると次男が「俺のだ!」と言いだして、その後にネクタイが出てきた。

見覚えがあるなあと思って、気がついて叫んじゃった。

「あ、これ俺が初めての給料で、親父に買ってやったネクタイだ!」

…………・

その後に、次々と昔の品物が出てきて、最後に黒い小箱が出て来たんだよ。

その中には、子供の頃に、家の前で、家族全員で撮った、

古い写真が一枚出て来たんだ。

それを見た俺の嫁さんが、泣きだしちゃってさ、

その後に、みんなも、なんだか泣きだしちゃったのだ。

……………・

俺も最初は、何でこんなものが、金庫の中にあるのかがわからなかったため、

「なんだよ、金目のものがねーじゃん」とか思って、

ちょっと鬱になっていたんだけれど、少し経って、

中に入っていた物の意味が、理解できた時、その写真を持ちながら肩震わして泣いちゃったんだ。

人前で初めて号泣しちゃったよ。

そこで鍵屋が、気まずそうに「あの、私そろそろ戻ります」とか言ったんで、

みんなが、はっとして、涙をにじませながら「ありがとうございました」と言った。

この時、俺は

「親父が、どんなに俺達のことを想っていてくれたか」と感動した。

さっきまでの自分が、金目当てで金庫を開けようとしたこと、

子供の頃に親父に反感を抱き、喧嘩ばっかりしたことが、

恥ずかしくて仕方なかった。

親父は、金より本当に大事な物を、残してくれた。

・・・・・・・

明日(第3話)はここからです。「彼の携帯」

私と彼と最初に会ったのは、会社の懇談会だった。

ふとしたことから一緒に遊ぶようになり、付き合い始めた。

私は、元々打たれ弱い性格だったので、彼に愚痴ってしまうことが多かった。

でも、彼はそんな私にいやな顔一つせずに、

優しい言葉を掛けてくてたり、励ましてくれていた・・・

それでは、また 明日お会いしましょう! 「キュ」