感動する色々な家族像 第4話「立派な母親」
「立派な母親」
もう10年も前の話である。
妻が他界して1年が経った頃、当時8歳の娘と3歳の息子がいた。
妻がいなくなったことをまだ理解出来ないでいる息子に対して、
私は、どう接してやればいいのか、
父親としての不甲斐無さに悩まされていた。
実際私も、妻の面影を追う毎日であった。
寂しさが、家中を包み込んでいるようだった。
そんな時、私は仕事の都合で家を空けることになり、
実家の母に、しばらく来てもらうことになった。
………
出張中、何度も自宅へ電話を掛け子供達の声を聞いた。
2人を安心させるつもりだったが、
心安らぐのは私の方だったような気がする。
…………
そんな矢先、息子の通っている幼稚園の運動会があった。
「ママと踊ろう」だったか、そんなタイトルのプログラムがあり、
園児と母親が手をつなぎ輪になって、お遊戯をするような内容だった。
こんな時に、そんなプログラムを組みなんて・・・
………
「まあ、行くよ♪」笑いながら、そう言ったのは娘だった。
息子も笑顔で娘の手をとり、二人は楽しそうに走って行った。
一瞬、私は訳が分らずに唖然としていた。
…………
隣に座っていた母がこう言った。
あなたがこの間、九州に行った時に正樹はいつもように泣いて、
お姉ちゃんを困らせていたのね。
そうしたら、お姉ちゃんは正樹に、
「ママはもういなくなっちゃったけど、お姉ちゃんが居るでしょ?」
「本当はパパだってとってもさみしいの、」
「だけどパパは泣いたりしないでしょ?」
「それはね、パパが男の子だからなんだよ。まあ君も男だよね」
「だから、だいじょうぶだよね?」
「お姉ちゃんが、パパとまあ君のママになるから」
そういったのよ。
何ということだ。
娘が私の代わりに、この家を守ろうとしている。
場所もわきまえず、流れてくる涙を止めることが出来なかった。
…………
10年経った今、無性にあの頃のことを思い出しまた涙が出る。
来年から上京する娘に対し、おとうさんは何かしてあげられただろうか?
…………
君にどうしても伝えたいことがある。
「支えてくれて、ありがとう。君は最高のママだったよ。
私にとっても、正樹にとっても・・・。
ありがとう 本当にありがとう・・」
・・・・・・・・・・・・
明日(第5話)はここからです。
今日は結婚記念日でカミさんと外食した。
レストランは、そこそこに混んでいてガヤガヤうるさかった。
特に隣の家庭がうるさくって、カミさんとちょっと顔を見合せて、苦笑いをしたくらいだった。
明日で感動する色々な家族像(全5話)を終わります。
題名は、「最後の晩餐」です。
今日も素敵な一日をお過ごしくださいませ。
九州震災被災者に思いをよせて 「キュ」