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181.武士の孝養(全3話)第一話

江戸時代、大道寺友山という思想家が、「武道初心集」という書物を書いた。

徳川幕府を存続させるためには、いつまでも戦国時代の下剋上を引きずってはいられない。

お家安定のために、いかなる主人にも忠義を誓う儒教精神の必要性を感じた。

しかし、大道寺は、御上に飼い慣らされるような生き方は嫌った。

といって、実力のない主人をすぐに捨てる戦国時代に戻る訳にはいかない。

そこで、民の手本にもなる、真の武士らしさを貫く武士道とは何かを追い求めることにした。

「武士道初心集」は、江戸時代に於ける武士の入門書である。

その口語訳「自分を鍛える(童門冬二監修、坂井昌彦訳)の中から、今も通ずるものを取り上げます。

1.一日一日が真剣勝負

武士たるもの、正月元旦の朝の雑煮のモチに箸をつけたその時から、その年の大晦日の夜までの365日、毎日毎夜、死を恐れてはならない。死を常に意識において行動すれば、忠義と孝行から外れることはない。

つまり、いつ死ぬかわからない状況にあれば、「わが命は今日限り」という覚悟で、毎日主君や親に尽す事が出来ると言う考え方だ。

心の油断から慎重さを欠いて、他人と口論に及んだり、無益な物見遊山に出かけて人ごみの中でつまらぬ喧嘩をして負傷落命し、主君の名前を汚すようなことをしてはならない。

死を恐れ、過食、大酒などの不養生を続け、いずれ脾臓、腎臓などの内臓の病気を患い、人に迷惑をかける。

逆に、死を常に意識する者こそ、酒色を慎む。昼、夜にかげらず、仕事に励み、少しでも余裕が出てきた時に、また死の一字を思い出し、覚悟を新たにしなければならない。

葉隠れ(はがくれ)」に「武士道というものは、死ぬことと見つけたり」という言葉がある。

口では不退転とか、死ぬ気でがんばると簡単に言うものの、やっていることが、未練たっぷりの往生際の悪い政治家や官僚が最近目立つ。

「死ぬ気で世の中の役に立つとはどういうことか」の意味を考えて欲しいものである。

明日(第二話)はここからです

  • 「孝」を貫く

 

武士たるもの、親に孝養を尽すことが第一条件とする。

どんなに才気盛んで弁舌さわやかであろうと、親不幸者は、ものの役に立たない。

義理が分からない者は、武士とはいえない。

全く赤の他人同士であっても、お互いの気心が通じ合って親密になり、相手のことを大切に思って尽くそうとする。

まして、親なれば、子供として、どれ程孝養を尽そうと、それで十分と言うことはないはずである。・・・