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素直な心(パート2) 道理を知る(全3編)その2

わずかに千両の金が増えるからといって、世の風俗を乱してはなりません。

運上金を多くしようとすれば、物の値段が高くなっていくのです。

このことを、よくよくお心得願いたく存じます」

人々は、播磨守の遠いおもんばかりを知って、皆、その言に従ったということです。

幕府の役人としての立場からいえば、運上金、つまり税金が千両も増えるということは、願ってもない話だったかもしれません。

だから他の役人達は、許可しようという意見を持ったわけです。

これはこれで、一つの考え方です。

しかし、それはそれだけの考え方というか、一つの立場にとらわれた考え方です。

播磨守は、それだけの考え方に留まることなく、そのことによって、更にどういう影響が出るのか、どういう結果を生むのかということを深く考えました。

それで、税金が千両増えるというプラスの裏に、より以上のマイナスがあるということを、見抜いたのではないかと思われます。

この播磨守のそういう遠いおもんばかりは、どこから生じたかというと、それはいわゆる視野の広さというか、物事の一面だけを見るのではなく、全体の実相を見つめて、その道理を知ったと思われます。

そして、そういう道理がわかるという姿は、やはり素直な心の働きによって、生まれてくるのではないでしょうか?

このように広い視野で物事の背景なり、全体の形を見抜くということは、世の中の仕組み、人々の生活の姿というものを知らなければ、出来ないと思います。

それが出来たのは、世の中の姿を知り、物の道理というものを掴んでいたからでしょう。

明日(その3)はここからです。

播磨守のこの高見に更に付け加えるべきことは、「盗み」が多くなればさらに物価も上がるということです。

つまり、取り締まりの役人も増やし、家々もカギをふやし、というようなことになれば、いっそう物入りとなって、めいめいの商う物の値段が、更に結び付くことでしょう。

即ち、治安が乱れれば、ますます物価が高くなるわけです

今日の我々も、物価の問題について、いろいろと悩まされていますが、お互いに播磨守のように道理を知り、遠いおもんばかりを持って、物事を考えることも、一面において大切なことではないかと思います。

そしてそのためにも、まずお互いに常に日頃から、「素直な心」というものを十分養い高めて、常に「素直な心」が働くよう、心がけていくことが、大切だと思います。