無口と言われ続けて(全2編)その2

その後。私は、高校へ入学しました。

自宅からは、電車で、十数分の間にあった高校ですが、初めて自分の教室に入った時に、周りを見回して、クラスメイトに知っている顔が、全く居ないことに気づきました。

同じ中学から、何人かは、この高校へ入ったはずですが、同じクラスになったこともなく、知り合いでもない生徒ばかりでした。

ということは、このクラスには、私が無口でおとなしいということを知っている者は誰もいないのです。

私は言いたいことも言えない、そんな学生生活に、もううんざりしていましたので、これは、ひょっとしたら、凄いチャンスかも知れない、などと思い、ちょっと勇気を出して、隣の席の生徒に、ちょっとだけ話しかけてみました。

どんなことを話したのかは忘れてしまいましたが、彼は普通に返事をしてくれたのです。

当たり前のことのように思えますが、その時の私にとっては、これは、背筋に電撃が走るような大きなことでした。

自分が、普通に、同級生と話している。

彼は、「無口のくせに・・・」などという顔などせずに答えてくれました。

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私は、自分が無口だから、人と上手く話すことなんて出来ないと思っていたし、無口なはずの自分が、話しかけたりしたら、変な風に思われるのではないかと、ずっと信じてきていたのです。

考えてみれば、それは、私の勝手な信じ込みに過ぎなかったのです。

そんな信じ込みを手放した時の気持ちは、何か背中に乗っていた重いものが、どこかへ飛んでいったような、スッキリとしたものでした。

それからは、まあ、相変わらず、ちょっと人見知りはしますが、人とは普通に話せています。

人からみれば、大したことでもないように思えるのでしょうが、小学校や中学の時代を振り返ってみれば、これは私には、人生が変わるような、大きな出来事だったのです。

そう、私は目隠しをしたまま、ありもしないバケツや植木鉢を、一生懸命に避けようと、がんばっていたのですよね

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あなただって、ひょっとしたら、今もまだ目隠しをしたままのことがあって、それで、苦しんでいるのかも知れません。

それは、きっと、何かに気づき、自分が大きくなっていく為のきっかけなんでしょう。

思い切って目隠しを取ってみる勇気。

変化を楽しむ勇気。

目をそらさず前を向いて進んでいく勇気。

人生にとっては、ちいさくても、そんな勇気を持つことが、魂を磨くことにまっていくのでしょうね。(終わり)

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明日は、ここから始まります。

年を重ねるにつれて、「初めて」という体験は、どんどん減ってくる。

いつものやり方で処理し、いつもの考え方で問題を解決し、いつもの朝が始まり、いつもの夜が来る・・・題して初めてを始める」です。

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明日は都合により、夜の投稿になります。申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。いつもご覧くださりありがとうございます。