至誠を貫いた三国清三さん(全3編)その2
村上さんはそれを見て、三国さんに、「綺麗に洗えていたね」と、言ったそうですが、三国さんが「今日は、何をさせてもらいましょうか?」と、訊いたところ、また、「そうだなぁ、鍋でも洗ってもらおうか」って、言われたそうです。
で、なんと、このあと三国さんは、2年もの間、なべ洗いを続けたのです。
勿論悔しかったと思います。
でも、三国さんの偉いところは、その時に「鍋洗いなんて・・・」と、手を抜くようなことはしなかったのです。
「そんなことを言うのなら、オレの鍋洗いを、見せてやる!」と来る日も来る日も、鍋をピカピカに磨き続けたのです。
隅々まで・・。
でもさすがに、2年間も鍋洗いを続けていて、「このまま、ここにいても、料理の腕は上がらない」と、思われたそうです。
もう、村上さんのところに行って「辞めさせて下さい」と、言おうと、決めたとのことです」
でも、そんな折、逆に村上さんに呼ばれて、
「来月から、スイスの日本大使館公邸の料理長をやってもらう!」
と言われたのです。
これ、ものすごい大抜擢です。
鍋洗いばかりしていたのです。
三国さんは。料理なんて、そんなにしていないのです。
帝国ホテルに来てから、この2年間。しかも二十歳ですよ。二〇歳。
・・・
スイスの日本大使館公邸の料理長と言えば、各国の王室関係者、首相、外務大臣などが訪れるわけです。
そんなVIP達の夕食会や公式行事で、どんな料理で、もてなすのかということは、本当に重要なことです。
周りの料理人達は、猛反対をしたそうです。
明日(その3)はここからです。
「鍋洗いしかしていない三国を、何でそんな所へ行かせるのですか?
他にもっと優秀な料理人が、たくさんいるじゃないですか!」
当時、帝国ホテルには600人以上いたそうです。料理人が・・。
その時、村上さんは・・・こう言いました