「クレヨンしんちゃん」は、なぜ中国で勝訴したのでしょう。

クレヨンしんちゃん」の商標は、中国企業によって、中国で勝手に登録されていました。

商標は、先に出願した者に、権利が発生します。

しんちゃんの権利者である日本企業は、どのように争うことによって、中国で勝訴したのでしょうか?

ヒント商標法でダメなら、別の法律で勝負しようという、あきらめない方針が、最終的に勝利を呼び込みました。

日本企業は、中国企業が登録した「しんちゃん」の商標の、無効審判で、いったんは負けましたが、あきらめずに、文字書体の著作権侵害を主張した別訴で勝訴しました。

しんちゃん事件の経緯

経済がグローバル化し、中小企業も含めて海外との取引や、海外進出をする日本企業が増えています。

企業法務は、国内だけでなく、海外にも目配りをしなければいけない時代になりました。

中国の商標制度も、日本と同様に、先に出願した者が、原則として商標権を取得する先願主義を取っています。

中国では、日本企業のブランドが、勝手に登録されているケースが、後を絶ちません。

これまでに、「無印良品」「青森」「讃岐うどん」「森伊蔵」「松阪牛など、著名な商品名や地名が登録され、日本企業による登録が拒絶されています。

しんちゃん事件では、中国企業は、複数の分類で、しんちゃんの権利者である双葉社より先に、中国語での表記を登録していました。

そのため、双葉社は、本物であるにもかかわらず、中国で同じ中国語表記で、商品を販売出来なくなってしまいました。

双葉社は、商標権の無効審判を請求しましたが、「5年間の除斥期間が過ぎている」と、いう理由で認められませんでした。

そこで、あきらめる日本企業も多いのですが、双葉社は、しんちゃんの文字書体の著作権侵害を主張して別訴で争い、こちらで勝利することが出来ました

それにより、中国企業による、販売停止と損害賠償が認められました。他方で、中国企業が、先に取得していた商標についても再審請求し、「不正手段により取得された」という理由で、無効とすることに成功しました。

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次回は、「企業法務」について考えます。