86.祈りの手(♪♪♪全2編)その1

「祈りの手」という有名な絵があるのをご存じでしょうか?

アルブレヒト・デューラー(1471-1528)というルネサンス時代の優れたドイツの画家がかいた作品です。

その作品にまつわる感動的な話です。

一部割愛し掲載します。

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1年、2年と年月は過ぎていきましたが、デューラーの勉強は終わりません。

勉強すればするほど、深く勉強したくなるからです。

ハンスは「自分がよいと思うまで、しっかり勉強するように」との手紙を書き、デューラーにお金をおくり続けました。

数年後、ようやくデューラーは、べネティアで高い評価を受けるようになったので、故郷に戻ることにしました。

「よし今度はハンスの番だ」と急いで、デューラーは、ニュールンベルグの町へ帰りました。

2人は再会を喜びました。

そして手を取り合って、いつまでも握りしめていました。

ところがデューラーは、ハンスの手を握りしめたまま、呆然としました。

そして、泣きました。

なんとハンスの両手は、長い間の力仕事でゴツゴツになり、絵筆が持てない手に変わってしまっていたのでした。

「僕のためにこんな手になってしまって」と言って、デューラーはただ頭を垂れるばかりでした。

自分の成功が、友達の犠牲の上に成り立っていた。

彼の夢を奪い、自分の夢が叶った。

その罪悪感に襲われる日々を過ごしていたデューラーは、

「何か僕に出来ることはないだろうか?」

「少しでも彼に償いをしたい!」という気持ちになり、もう一度、ハンスの家を訪ねました。

ドアを小さくノックしましたが、応答はありません。

でも、確かに人がいる気配がします。

小さな声も部屋の中から聞こえます。

デューラーは、恐る恐るドアを開け、部屋に入りました。

するとハンスが、静かに祈りを捧げている姿が目に入りました。

ハンスは、歪んでしまった手を合わせ、一心に祈っていたのです。

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今年も残すところ 後5日です。最後まで宜しくお願いいたします。