読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

「あなたへ」高倉健(全3編)その1

その1

この映画は、富山刑務所の指導技官・島倉英二(高倉健)のもとに、ある日、亡き妻・洋子(田中裕子)が残した絵手紙が届き、その一通に、白い灯台を一羽のスズメが見上げる絵をバックにして

「あなたへ 私の遺骨は故郷の海に撒いてください」と書かれている。

もう一通は、平戸の郵便局への「局留め郵便」であり、期限は10日間なので、それまでに、洋子の故郷(長崎県の平戸)へ向かわなければならない。

堅物で通っていた島倉が、慰問に来て歌を披露していた洋子と結婚して、穏やかで幸せな結婚生活を送っていた筈なのに、何故、妻は自分の思いを直接伝えてくれなかったのか、“自分は妻にとって一体何だったのか”その妻の真意を確かめたくて、苦しい思いを胸に秘めて、自家用のキャンプングカーに乗って、1200キロの道を、洋子の故郷平戸へ向かって旅立つのです。

スタッフたちが限りなき愛情をこめて慈しみながら写し出したであろう日本の風景が、実に美しくて印象的で、それに、道中で一期一会で遭遇する人々との奇遇な出会いと運命のふれあいが、胸を締め付けるほど強烈な感動を呼びます。

旅先で出会った風景や、人物を錯綜させながら、妻洋子との生活を思い出をオーバーラップさせて追走するストーリー展開は、正に素晴らしく、妻洋子との幸せだった思い出を反芻(はんすう)しながら改めて妻の愛情の深さに感動し、生きることの幸せと悲しみを噛み締める倉島の心の軌跡は、凝縮した人生そのもの、そして、人間賛歌です。

…‥‥‥

旅の冒頭部分には、二人の幸せそうな様子が描かれています。

自分たちが制作した神輿が登場する新湊川祭りを見物していて、知らないうちに、どこかぎこちない健さんの、デジタルカメラ写真に映し出された自分を見て喜ぶ妻の様子や、二人だけで氷見市島尾海岸の波打ち際を歩きながら、漂流してきた大きな古木を持ち上げて愛でる妻の姿を通して、病床の妻との対照性を出しています。

乗鞍スカイライン、飛騨高山、朝来の武田城址、大阪の道頓堀、下関の火の山や唐戸、門司港のレトロ地区、そして周着地の長崎県の平戸・藩香港と玄海の海。楽しく懐かしい日本の風景が展開されて行きます。

見事な映像です。

感動します。

天空の城と呼ばれている兵庫県朝来市にある武田城址で、妻(田中裕子)が「星めぐりの歌」を歌う野外コンサート・シーンは実に感動的で、その後、中国山脈の山並みをバックに真っ白な雲海に巨艦のように浮かび上がる城址が映し出されるのですが、実に美しい。

まるで、ペルーのマチュピチュのようです。

 

島倉(健さん)が、平戸の街を歩いていて、ふと立ち止まった打ち捨てられた廃墟のようになった古い写真館のショーウィンドウを眺めていて、色の褪せてしまった古い写真の中に、講堂の舞台に立って歌う女性との姿を見て、妻洋子の原点と言うべき故郷を感じて感動するシーンがあります。

映画のポスター写真がそのシーンです。

軽く、写真前のガラスを握りこぶしで叩いて挨拶し、その後、絵手紙に描かれた真っ白な伊王島灯台を訪れて、真っ青な有無に向かって、妻洋子の残した2通の絵手紙を空中に手放す。

もう一通の絵手紙には、灯台を後にして飛び立つスズメの絵をバックに、「さよなら」とだけ書かれていた。

続きは明日です。

それでは、「キュ」