人を感動させることの利益(全3編)その2

その2

中央公論「海の友情」阿川尚之著より)

 

陸上自衛隊イージス艦は、アーレイ・バーク型と云われますが、米海軍のトップに上りつめたアーレイ・パークの名前からきています。

彼は海上自衛隊の人間かと揶揄されたほど、日本のために大きな貢献を果たし、勲一

等旭日大勲章をしています。

亡くなった時、彼の遺言によって数ある勲章の中から、この勲章だけが彼の胸に付

けられていました。

それほど「日本びいき」だったのです。

……………

そのアーレイ・バークは最初は反日で、全く日本嫌いだったのです。

というのも彼は,第2次世界大戦の時駆逐艦隊を率いて、日本の艦隊と戦い何隻か撃沈したものの、自分の方も撃沈され多くの部下を亡くし、かた日本に関する情報は悪いものばかりで、ずっと快く思っていなかったのです。

それが、戦後日本に赴任となり、来日したのです。

…………

仕事以外のことで、日本人と話もしたくないという意識でした。

慰みに、ある日泊まっている帝国ホテルの地下で、花を買ってコップに入れて兄弟の上に置いておいたら、帰ってきた時、花は花瓶に差し替えられていました。

その後も新鮮な花が、いつも美しく生けられるようになったのです。

ある時、フロントで、その礼を言ったところ、ホテルはそんなことはしていないという返事です。

……………

調べてもらったら部屋のメードがやってくれていたのです。

会ってみると小柄な年配の女性で、ご主人を戦争で亡くしているのです。

お礼のお金を渡そうとしたものの一切受け取ろうとしないので、結局ホテルを通して匿名で彼女の退職金の一部として寄付しました。

とにかく、その一件がアーレイ・バークの日本人への認識を大きく変えるきっかけとなり、そんな小さな善意が日米関係にも影響を与えることになっていったのです。

‥‥‥‥‥

人間は利益のためか、損失を避けるために、常に行動する動物であると云われるように、無意識のうちにも、いつもシビアに損得勘定を計算しながら行動しています。

また、人に何か親切や善意をしてあげる時には、当然のこととして、その見返りを期待して行うものです。

だから、反対に全く見返りを期待しない、親切や善意の行動に、出会うと戸惑ってしまい、余計に心を揺り動かされるのかもしれません。

次回は、まとめを致しますね。

それでは、「キュ」