55.「早くしなさい!」と「ゆとり」(全2編)その1

 

 

西ドイツの童話作家ミヒャエル・エンデ

『モモ』という童話があります。

イタリア・ローマを思わせるとある街に現れた

「時間貯蓄銀行

と称する灰色の男達によって

人々から時間が盗まれてしまい

皆の心から余裕が消えてしまいます。

しかし貧しくとも友人の話に耳を傾け、

その人自身を取り戻させてくれる

不思議な力を持つ「モモ」が、

冒険の中で奪われた時間を取り戻す

というストーリーです。

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ローマ郊外にある円形劇場の廃墟に、

浮浪児の女の子のモモが住みつきます。

彼女には、

人の話をよく聞いてあげるという

特殊な才能が備わっています。

子供達は、学校帰りに「モモ」の所に寄って、

学校でのいやなこと、

その他様々な悩み等を話しているうちに、

不思議と気持ちが解放され、

ゆったりとした気分で帰るようになります。

やがてその話を伝え聞いた

大人達も集まるようになります。

仕事が終わって、愚痴をこぼしていくうちに、

知らず、知らず心の平安を得て家に帰るのです。

・・・

ところが、

「モモ」のいる町に「時間貯蓄銀行ができます。

「モモ」の住む町に「時間貯蓄銀行から

灰色の銀行員の男達がやって来て、

『人生の無駄使いをしないために

「時間」を貯蓄して、

後でたっぷり使いましょう』

と言って、

人々から次々に「時間」を奪っていきます。

その銀行員は、言わば時間泥棒です。

・・・

町に住む人々は、

最初は喜んで

自分の無駄な「時間」を貯蓄し始めます。

ある日、

床屋のフ―ジーさんの所にやってきて

こう聞くのです。

「散髪にどのくらい時間をかけていますか?」

「1時間かけている」

「それはもったいない。

無駄な世間話などしないで、

15分で散髪すれば45分節約できます。

家でお母さんの面倒を見るのも、

時間のムダだからやめて、

その時間を時間貯蓄銀行に貯蓄してください」

といわれたフ―ジーさんは、

散髪にかけていた時間を短縮し、

お母さんも養老院にいれ、

余った時間を銀行に入れてしまいました。

・・・

こうしてフ―ジーさんは、

ありとあらゆる無駄な時間を貯蓄した結果、

売上も伸びて金持ちになりますが、

セカセカして怒りっぽくなります。

・・・

町の他の大人達や子供達にも、

時間泥棒が働きかけます。

やがて町中の誰も、

「モモ」の所に来なくなってしまい、

町には落ち着きが無くなってしまいます。

そして街は灰色に・・・。

・・・

明日(その2)はここから始まります

そこで、時間泥棒モモとの間で、

「時間争奪戦」が始まります。

壮絶な戦闘の結果、

最後にモモが勝って、

町にゆとりと心の平安が戻るという、

誠に象徴的な童話です。

人々がその時「無駄な時間」

と勝手に思っていたのは、

実はその人々がその時にしか味わえない心の

「余裕(やすらぎ)」だったのです・・・

※今日は、投稿時間が夜になり申し訳ございません。

それでは、みなさま 

素敵な夜をお過ごしくださませ。「キュ」