三つの話(全3話)その3

(第3話)初めてを作るには

日常の中に食材を見つけるには、常に好奇心を持っていることが大切です。

誰でも、自分の知らないことに対して、興味がすごくあるでしょう。

例えば料理屋さんに行って、知らないメニューがあったら頼んでみる。

例えば「たてがみ」なんて料理名のものがあったら、

「なんだろう、たてがみ?」と思って、まず頼んでみると良いでしょう。

カレーライスが美味しい店に行ったら、殆どの人が2度目もまたカレーライスを頼むでしょう。

けれどこんな方法はどうでしょう。

「カレーライスが美味しいということは、ハヤシライスも美味しいんじゃないか?」

と勝手に予測してハヤシライスを頼んでみるのです。

これは多くの場合失敗する可能性が高い(笑い)。

「やっぱりカレーライスの方が美味しいか」と。

けれど、良い企画を生むためには、こうやって日頃から、自分の接触していないことにも興味を持つようにしていると、多くのことを知るきっかけになりますし、単純に面白いんですよ。

魅力的な人の多くは、「初めて」を作るのが上手なんですよ。

初めてハワイに行く。

初めてフグを食べる。

初めて車を運転する。

初めて飛行機に乗る。

子供であれば、初めて自転車に乗る。

何でもいいんですけれども、そうやって常に好奇心を持って暮らしていく。

そうは言っても、歳をとれば、どんどん「初めて」が無くなっていくのではないか、と思う人が多いと思います。

そうすると、仮に「ハワイに行こう」と言った時に、「ああ、ハワイにはもう何度も行っているし」となってしまう。

けれども、実際はハワイだって、訪れるたびに、また違う「初めて」を見つけることが出来るはずなのですが、多くの人が、そこでは「わかった気」になってしまうんですね。

秋元康の仕事学』NHK出版

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「初めて」を作りには、ちょっとした冒険が必要です。

習慣になっていることを少し変えてみるだけで、「初めて」が生まれる。

会社や学校に毎日通っている道。

寝る時間や、起きる時間、禁煙、ダイエット・・・

だが、自分だけの「初めて」に感動はあるが、人と楽しむ「初めて」の方がもっとワクワクする。

それは例えば、講演会、ワイン会、食事会、旅行など、何人かを集める企画をしてみること。

何かの会を主催すると、「初めて」が圧倒的に増えてくる。

そのためには、「億劫(おっくう)」「煩(わずら)わしい」「手間がかかる」といった面倒がる気持ちを捨てなければできない。

「初めて」を作るには自らが変化すること。

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変化するには、自分で決めている習慣や規則やルールといった荷物やしがらみを捨て身軽にならなければならない。

「初めて」を多く造り、いつまでも新鮮で、魅力的な人でありたい

(終わり)

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江戸時代、大道寺友山という思想家が、「武道初心集」という書物を書いた。

徳川幕府を存続させるためには、いつまでも戦国時代の下剋上を引きずってはいられない。

お家安定のために、いかなる主人にも忠義を誓う儒教精神の必要性を感じた。

しかし、大道寺は、御上に飼い慣らされるような生き方は嫌った。

といって、実力のない主人をすぐに捨てる戦国時代に戻る訳にはいかない。

そこで、民の手本にもなる、真の武士らしさを貫く武士道とは何かを追い求めることにした。

「武士道初心集」は、江戸時代に於ける武士の入門書である。

その口語訳「自分を鍛える(童門冬二監修、坂井昌彦訳)の中から、今も通ずるものを取り上げます。

題して「武士の孝養」全3編