「素直な心…耳を傾ける」(全2編)その1
「素直な心」を持つことは、人間の成長にとっても、人間関係の改善にとっても、大変重要な要素だと言われています。
お互いが素直な心になれば、していいことと、してはいけないことの区別も明らかとなり、また正邪(せいじゃ)の判別も誤ることなく、何をなすべきか、分かってくる。
そして、あらゆる物事に関し、適時適切な判断のもとに、力強い歩みが出来るように、なってくるのではないかと思います。
素直な心というものは、誰に対しても何事に対しても、謙虚に耳を傾ける心であります。
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戦国時代の武将、黒田長政は、“腹を立てず”の「異見会」という会合を、月に2~3度ずつ催していたといいます。
参加者は家老をはじめとして、思慮があって、相談相手に良いもの、又はとりわけ主君のためを思う者等六~七人であったということです。
その会合を行う場合には、まず長政から参加者に対して、次のような申し渡しがあります。
「今夜は何事を言おうとも、決して意趣(人を恨む気持)に残してはならない。
他言もしてはならない。もちろん当座で腹を立てたりしてはならない。
思っていることは、何でも遠慮なくいうように」。
そこで一座の者も、それを守る誓いを立てた上で、長政の身の上の悪い点、家来達への仕打ち、国の仕置きで道理に合わないと思われる点など、何でも底意(そこい・心の底に潜む考え)なく申し述べるわけです。
過失があって出仕(役所などの仕事に出ること)を止められた者や、扶持(給料)をはなれた者への詫(わび)も言う。その他何事によらず、通常の場合には、口にしにくいことを言い合いました
その間に、長政に少しでも怒りの気色などの見える時は、参加者が「これはどういうことでございますか。怒っておられるように見えます」という。
そうすると、長政は、「いやいや、心中に少しの怒りもない」と、顔色を和らげる。こういう姿であったということです。
この異見会は、非常に益のある会合となっていました。
そして長政は、その遺書の中にも、「自分がしてきたことのように、今後も異見会を毎月一度は催すようにせよ」と書き残していたということです。
次回(その2)はここからです
戦国時代の武将と言えば、とかく戦場で全軍に下知(げじ・命令)をとばし、部下を叱咤するといった激しい姿が想像されますし、また城にあっても殺生与奪(せっしょうよだつ)・・・