94)日本一のパパ(♪♪♪全2編)その1
木村(仮名)さんは、3店舗のラーメン店を経営していました。
もともと、ある食堂の厨房で下働きをしていた木村さんにとって、自分の店を持つことは当初からの夢でした。
そして、念願かなって、1店舗目をオープンすることができました。
目新しさもあって、一時はそれなりの人気店になり、その勢いで続いて2店舗目、3店舗目をオープンさせました。
ところがその後、売上はいっこうに伸びず、それどころか次第に客数も段々減少していきました。
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毎日、朝早く起きて仕込み、昼間は休みなく働き続け、スタッフが帰った後も深夜まで一人で片付け…。
我も忘れて、一生懸命に働いているにもかかわらず、毎月150万円前後の赤字を出し続ける状況にまで悪化してしまいました。
駅前でチラシを配ったり、お客様に割引チケットを配ったり、知人の家の壁にポスターを張ってもらったり、とにかく出来ることを見つけて、少しでも売上を伸ばす努力を続けました。
しかし、どんなに努力をしても、どんなに働いても、一向に店の状況がよくなる気配はありません。
次第に顔からは、笑顔が消え、いつも眉健間にしわを寄せていました。自信も無くし、生気も無くなっていきました。
木村が帰宅すると、妻の幸子さんと幼い子が寝ています。
その横で静かに着がえていると、目を覚ました幸子さんが、小さな声でいつも言います。
「今日も遅くまで、お疲れさま…」
「・・・まあな・・」
そんな時、木村さんは何と返事していいのかわからず、いつも力のない返事になってしまいます。
「妻に心の内を話したところで、どうにもならない。自分ひとりで解決するしかない…」
勿論、夫の苦しい状況は、妻の幸子さんもうすうす感じていたのですが、「お疲れ様」と言う以外、伝える言葉がありませんでした。
幸子さんも、なかなか寝付けない日々を過ごしていたのです。
業績がどんどん下がっていく状況に対し、何らかの手を打つことが出来ない歯がゆさに苦しみながら苦悶をしていました。
そんなある日・・・木村さんが、いつものように明け方になって家に帰ると、寝ている幸子さんの横で、子供が起きていました。
何気なく、そっと抱きあげました。
そして、あやそうとすると、やっと片言で話し始めたばかりの子供が、手をバタバタさせながら、必死になって自分に何かを伝えようとしています。
「・・ぱぱ」何を言っているのか、初めはよくわかりませんでした。
「ん?どうしたの?」声を掛けますが、「・・んち、ぱぱ」「・・んち、ぱぱ」それでも、子供は同じ言葉を何度も言っているようです。
「な~に?・・」「・・いちんちの・・ぱぱ」「・・いちんちのぱぱ」こちらの顔をじっとみて、一生懸命何かを伝えようとしています。
「何の、ぱぱ?」そして、とうとう、子供の言葉を、はっきりと聞き取ることができました。
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今日も 宜しくお願いいたします。
93)過労自殺を考える(ストレスチェック:安心して使える制度に)
一昨年から”職場でのストレスチェック制度”の運用が始まりました。
50人以上の従業員を抱える企業は、今月までにストレスチェックを実施無ければならなくなっています。
過労死など仕事のストレスで心身の不調に陥る人をなくそうという目的で始まった制度です。
これまでお話してきましたが、ストレスがたまってくると自分で自分の状態を判断する力が失われてきて、いつもなら出来ていた自己チェックができなくなり、自ら命を絶つしかないと考えるまでになるのです。
これを防ぐには、個人の工夫に頼るだけでは不十分。
周囲からの支援が不可欠なのです。
その手立ての一つとしてストレスチェック制度が法制化されました。
働く人が質問票に答えることで、自分のストレス度をチェックし、高いストレス状態にあるとわかった人は、希望すれば産業医から企業に結果を開示し、ストレスを改善するように企画側に働きかけることができます。
ただ、現実には上手く活用できていない企業が少なくないようです。
そもそも、職場が原因で自分がストレスを感じていると申し出る労働者がほとんどいないのです。
それを知られることで、どう思われるか。
訴え出ることで職場の上司や仲間を批判しているように受け取られるのも本意ではありません。
制度上は訴え出ても不利益にならないとされていますが、目に見えない形で不利益を被るのではないかと考えている人も多いとおもうのです。
このままではせっかくの制度が生きてきません。
情報を開示しなくても相談できる仕組みの充実など、有効活用に向けての改善を続ける必要があるとおもいます。
今回は、「電通事件を考える」と題して、こころの問題を取り上げました。
次回から、また「ざっくばらん」を投稿いたします。よろしくお願いいたします。
(社)診療対話士協会認定
心療カウンセラー 石橋
92)過労自殺を考える(冬眠状態を脱するには:意識して外出しよう)
1月に入って冬の寒さが本格化してきました。
気分が極端に落ち込んで日常生活に支障が出てくるうつ病は、「こころの冬眠状態」と例えられることがあります。
心理的に厳しい現実を前にして自分の世界に閉じこもっていると考えられるからです。
このように書くと、現実にきちんと向き合えないこころが弱い人間がかかる病気だと誤解されそうですが、けっしてそうではなく、精神的に疲れ、自信をなくしているために、現実が実際以上に厳しく見えてしまうのです。
こころが疲れてくると、まわりの人から煙たがられているように感じて、人に相談することもためらわれるようになります。
そのために、現実から距離を取って自分の身を守ろうとする。
しかし、それで身を守れるかというと、必ずしもそうではありません。
現実から距離を取ると言うのは現実に向き合えなくなることでもあり、問題に適切に対応できなくなります。
その結果、ますます自信が無くなってくるという悪循環に陥るのです。
このような時には、簡単なことでよいので、自分の力でできることを手がけてみたり、楽しめることをやってみたりしてください。
そうすることで自分を取り戻すことができるし、少しずつだが自信もついてくるはずです。
冬に限ったことではありませんが、気分が沈み込みがちのときはには、少し意識して外に出たり、身体を動かしたりするようにした方がいいです。
そのようにして、タイミングを計りながら、冬眠の洞穴から出ていけるように準備することが大切になります。
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明日、一昨年から行われている「ストレスチェック」について触れます。