107)三つの話(全3話)第1話
(第1話)ヒツジとヤギ
川を渡るために、丸太の橋が架けられていました。
その橋は大変幅が狭いのです。
ある日のこと、二匹のヒツジが橋で会ってしまいました。
二匹ともせかせかと橋を渡り始めます。
橋は狭かったので、その二匹は、すり抜ける余地はありません。
しばらく立ち止まりました。
相手のヒツジをみて、一方は怒りだしました。
その二匹は角を突き合いぶつかり合っているうちに、二匹とも橋から転落して死んでしまいました。
別の日、今度は二匹のヤギが、先ほどの丸太橋の真ん中で会ってしまいました。
橋は狭いです。後ろには下がれません…二匹のヤギは途方に暮れてしまい、しばらく立ち止まりました。
さて、ヤギさん、どうしたでしょうか?
・・・
一匹のヤギが、うつ伏せになって寝ました。
もう一匹のヤギの方は、理解しました。
彼は橋の上にピッタリと張り付いて寝ているヤギの背中の上に、ゆっくりと足を乗せて前に進みました。
そのヤギが行ってしまった後、もう一匹のヤギもゆっくりと起き上がり、二匹とも仲良く橋を渡りました。
・・・
「自分は正義」「自分は間違っていない」「相手が間違っているんだ!」と思う時があるかもしれません。
しかし、相手にとっても自分は正義なんです!
「正義と正義は、時にぶつかり合う」のです。
自分が勝つこと、自分が得をすることばかり考えるのではなくて、自分が踏み台になってでも、相手を尊重すること、相手の為に何ができるか?と考え行動すること、その心が幸せですね。
106).泥かぶら(全3編)その3
ところが、そんなある日、村に恐ろしい「人買い」がやってきました。
人買いは借金のかたに、一人の娘を連れて行こうとします。
「泥かぶら」と同じ年の親しい娘です。
見かねた「泥かぶら」は、人買いに、自分を身代りにしてくれと頼みます。
こうして、売られていく「泥かぶら」と人買いとの都への旅が始まります。
旅の途中、毎日、「泥かぶら」は、何を見ても笑い喜びます。
しかも人買いを自分の父親のように慕い、親切にするのです。
そんな「泥かぶら」の姿に人買いは、激しく心を揺さぶられます。
月の美しい夜でした。
人買いは、「泥かぶら」に、お金と共に置手紙を残して、そっと姿をけします。
手紙には、こんな言葉が書かれていました。
「俺はお前の寝顔を見て恥ずかしくなった。お前が話をきかせた赤ん坊のように俺の心に憎いものが無くなった。今日から人質はやめる。いい仕事をしよう。お前も、幸福にお暮らし。・・・俺は今踊りたいくらいだよ。お前のお陰だよ。お前の笑い声、俺は一生忘れない。ありがとうよ。仏の様に美しい子」
・・・
「泥かぶら」は、その時初めて、お爺さんが自分に示してくれた、教えの意味を悟るのです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
泥にまみれて、醜い姿をしていた少女も、自分を変えることができました。
彼女に酷い仕打ちをしていた周りの人達の心も、期せずして変わっていきました。
………
どんな人間でも、自分を変えることが出来ます。
自分の心がけを変えるだけで、自分の人生を変えることができます。
人を幸せにすることもでき、それがまた自分の幸せにつながります。
そうして、私達の人生はさらに美しく、愛に満ちたものになるのです。
………
「泥かぶら」が教えてもらい、そして実行した次の3つは大事なヒントです。
・自分の顔を恥じないこと。
・どんな時にもにっこりと笑うこと。
・人の身になって思うこと。 (終わり)
105).泥かぶら(全3編)その2
果たして、「こずえ」の後ろから、父親の庄屋が竹の鞭を持ってやって来ました。
庄屋は、大切にしていた茶碗を割られたことで、怒り心頭に達していました。
父親の怒りを逃れるために、「こずえ」は、「泥かぶら」に罪を着せてしまいます。
怒り狂ったような庄屋は、娘の言うことを信じて疑いません。
「泥かぶら」を見つけると、容赦なく鞭で打って、折檻をし始めました。
「泥かぶら」は、黙ってその鞭を受けました。
………・・
何度も何度も叩かれ、ひどい言葉を浴びせられながらも、お爺さんのあの言葉を思い出しながら、「泥かぶら」は最後まで耐え忍びました。
しかし、それでも「泥かぶら」の顔は、少しもきれいになっていません。
絶望感と怒りに苛まれた「泥かぶら」が一人で泣いていた時でした。
「泥かぶら」を呼ぶ「こずえ」の声がしました。
「泥かぶら。堪忍して」そして、「こずえ」は、おずおずと自分が一番大事にしていた櫛を差し出したのです。
………・・
美しい櫛に心引かれるものの「泥かぶら」は、自分のちぢれた頭を思い出し「あたいなんか・・・だめだ」とためらいます。
「こずえ」は、そんな「泥かぶら」の頭の泥を払い、櫛で髪の毛をすいてあげて、かたわらの花を挿してあげるのでした。…
二人の間に、確かな友情が芽生えてきたのです。…
ちょうどそこへ、病気の妻のために薬草を探しにきた村の男がやってきます。
その薬草は、登るには危険な岩鼻にしかなく、男は失望していました。
「おじさん、あたい、採って来る」「泥かぶら」は、そう言って駆け出しました。
しばらくして全身傷だらけになって戻ってきた「泥かぶら」と手にした薬草を見て、男が、感謝感激したのは言うまでもありません。
「泥かぶら」の心にも、喜びが湧きあがってくるのでした。
……
それからです。
「泥かぶら」は、村の人のためになることを、次々と考えて実行していきます。
山に入って薪を拾ってきたり、子供が泣いていたら慰めてやったり、子守りをしてやったり、人の嫌がることでも、ニコニコしながら次から次にしていきます。
村人達は、たいそう喜び、「泥かぶら」も嬉しくなります。
すると、心も穏やかになっていき、あれほど醜かった表情が消えて無くなっていきました。
村人のために、労をいとわずに働く「泥かぶら」は、次第に、村人にとってかけがえのない存在になっていったのです。
・・・
※いつもありがとうございます。明日も宜しくお願いいたします。