96)人間理解『大相撲力士…栃東の戦い方』(その二)

 当人の栃東はというと、「本当は思い切ってぶつかるつもりであったが、勝ち越しが掛っていたし、緊張してつい…。とっさに動いちゃった」とちょっぴり照れくさそうだった。

この癖がある為、これまでも技能賞の常連なのに、賞の対象から外されることがあるのです。

マイナス評価を受けることが分かっていながら、本人も何故そうなるのか、解っていない。

これもまた「性(さが)」の領域であろうか。

一方、これまで癖であった引く欠点を直し、前に出ることに専念した福岡県直方出身の小結魁皇が、友綱部屋としては、84年ぶりにゆうしょうし、殊勲・敢闘両賞を手にしました。「性(さが)」だと言って割り切っていては成長しません。

 

後日談があります。さすがに周囲からの批判にようやく気付いた栃東は、引くことを禁じ手に精進し、見事大関まで上り詰めたのです。

「性」は確実に存在します。

それを意識して、それを乗り越えようと思う人は、必ず超えられることであると信じたいです。

・・・

96)人間理解『大相撲力士…栃東の戦い方』(その一)

大相撲に興味にある方で、40歳以上の方なら覚えていらっしゃるかと思います。

2000年大相撲5月場所11日目。

8勝3敗で勝ち越しながら、各方面から非難を浴びた力士がいました。

貴闘力に勝った関脇栃東は、若干23歳で、若手の先頭を行く将来も相撲界を背負って立つ有望力士です。

とこか勝ち越が掛かるとか、大事な一番になると、立ち会いに変化して確実に白星をつかむケースが目立っていました。

そのあっけさにお客様は、ざわざわとあきれたような反応をしました。

大事な時に決まって変化する(別の言い方をすると、逃げている)ということが、伝説になりかけている。

その為、審判部も「逃げているかもしれないぞ」と思って見ていると、やはりその通りになる。

この日も、また原点となってしまいました。

この日大戦をした貴闘力は「俺と10歳も違うバリバリの若手だろう。俺のような土俵人生が終わりかけの相撲取りに対して、あんなことをして勝っても嬉しくないだろうなあ。相撲界の将来を背負う人が淋しいよ。俺なんかには、まともに来たって、勝てそうなのに」寂しそうだった。

時津風理事長は「いけないことだと注意されているのに、彼は聞く耳を持っているのだろうか。あんな相撲で勝ち星を積み重ねたって、何にもならん」と。

どの新聞にも、彼の相撲の姿勢が批判されている。

ここまで一横綱大関を撃破してきた活躍が、帳消しになってしまう。日以降成績は1勝3敗になり、9勝6敗とじり貧に終わりました。

…長くなりますので、続きは次回で…

 

95)日本一のパパ(♪♪♪全2編)その2

「にほんいちのぱぱ」「にほんいちのぱぱ」「!」「!」

思わず、木村さんの目に涙があふれ、頬を伝わって流れていきました。

「・・・・・」子供を抱きしめながら、ただ泣きました。

それまで、必死に耐えていた「心のたが」が外れたように、あふれてくる悔しさを我慢することが出来なくなりました。

「悔しい・・なんと、自分は情けない人間なのであろう。子供の言葉に素直に、「そうだよ」と、うなずけない自分が・・本当に悔しい。日本一どころか、明日食べていけるかどうかもわからない。この子は、それでも自分のことを、日本一と思っている・・」

その日、木村さんは布団の中で目をつむっても涙が止まらず、とうとう一睡も出来ませんでした。

それから木村さんは、一念発起し、気分を一新し貪欲に情報を集めました。

来店されるお客様には、何が不足しているのかを尋ねました。

他店でのお客様の会話にも必死に耳をそば立てました。

そして良いと思ったことは、次々に行動に移していきました。

「どんな苦労をしてもかまわない。子供が誇りに思うような父親に、絶対なる!」

毎日、毎日、これまでのやり方を否定し、新たな工夫・研究を続けた結果、次々と新しいメニュを作ることに成功していきました。

・・・

実はこの話の陰には、妻、幸子さんの内助の功がありました。

仕事の面では、何も手伝うことが出来ない幸子さんは、心の中でいつも、彼を励まし続けていました。

仕事が終わり、疲れて戻った夫に顔を合わす時には「アイコンタクト」「うなづき」「笑顔」を、忘れることなく注ぎ続けました。

そして、帰りの遅い父親がいない家の中では、毎日子供に語りかけていたのです。

「あなたのパパは日本一のパパよ」

『仕事が夢と感動であふれる5つの物語』きこ書房

たった一人でも、大切に思ってくれている誰かがいてくれているだけで人は頑張れる。

そして、時にはその一人のために、命さえかけることも出来る。

「日本一のパパ」

もし、子供にそう言われたら、どんな苦労も耐えられる。

そう思いませんか?