感動する色々な家族像(その2)
「父親の宝物」
三年前に親父が死んだんだけど、
ほとんど遺産を整理し終えた後に、
親父が大事にしていた金庫があったんだよ、
うちは三人兄弟なんだけど、お袋も死んでしまい、
誰もその金庫の中身を知らなくてさ・・。
取りあえず、兄弟家族みんな呼んで、その金庫を開けるようにした。
だけど、これがまた頑丈で、なかなか開かないんだよ。
仕方ないから鍵屋を呼んで、開けて貰うことにしたのだ。
ところがその金庫が、なかなか開かなくてさ、
何となく俺たちは子供の頃の話を始めたんだよ。
親父は、昔からすごい厳格で、子供の前で笑ったことも一度もなくて、旅行なんてほんと行かなかった。
子育ても、お袋に任せっきりで、ガキの頃は、マジで親父に殺意を覚えたぐらいであった。
そういうわけだから、一番下の弟が、
「しこたま溜め込んでいるんじゃねえか?」
みたいなことを言い出した。
その後に、真中の弟も、親父が夜中に金庫の前で、
ニヤニヤしながら、ガサガサやっていたのを見たとか、
言ったから、俺もかなり金庫の中身に期待を抱いちゃったんだ。
……………
その時、鍵屋がちょうど「カギ、開きましたよ」と言った。
ワクワクしながら、金庫の前に行き、長男の俺が金このドアを開けたのである。
そしたら、古びた100点満点のテストなんだ。
それを見た一番下の弟が「これ、俺のだ!」と言って俺から取上げたんだよ。
弟はしげしげと、テストを見ていた。
次に出てきたのは、何かの表彰状。
すると次男が「俺のだ!」と言いだして、その後にネクタイが出てきた。
見覚えがあるなあと思って、気がついて叫んじゃった。
「あ、これ俺が初めての給料で、親父に買ってやったネクタイだ!」
…………・
その後に、次々と昔の品物が出てきて、最後に黒い小箱が出て来たんだよ。
その中には、子供の頃に、家の前で、家族全員で撮った、
古い写真が一枚出て来たんだ。
それを見た俺の嫁さんが、泣きだしちゃってさ、
その後に、みんなも、なんだか泣きだしちゃったのだ。
……………・
俺も最初は、何でこんなものが、金庫の中にあるのかがわからなかったため、
「なんだよ、金目のものがねーじゃん」とか思って、
ちょっと鬱になっていたんだけれど、少し経って、
中に入っていた物の意味が、理解できた時、その写真を持ちながら肩震わして泣いちゃったんだ。
人前で初めて号泣しちゃったよ。
そこで鍵屋が、気まずそうに「あの、私そろそろ戻ります」とか言ったんで、
みんなが、はっとして、涙をにじませながら「ありがとうございました」と言った。
この時、俺は
「親父が、どんなに俺達のことを想っていてくれたか」と感動した。
さっきまでの自分が、金目当てで金庫を開けようとしたこと、
子供の頃に親父に反感を抱き、喧嘩ばっかりしたことが、
恥ずかしくて仕方なかった。
親父は、金より本当に大事な物を、残してくれた。
・・・・・・・
明日(第3話)はここからです。「彼の携帯」
私と彼と最初に会ったのは、会社の懇談会だった。
ふとしたことから一緒に遊ぶようになり、付き合い始めた。
私は、元々打たれ弱い性格だったので、彼に愚痴ってしまうことが多かった。
でも、彼はそんな私にいやな顔一つせずに、
優しい言葉を掛けてくてたり、励ましてくれていた・・・
それでは、また 明日お会いしましょう! 「キュ」