岩と旅人(全3編)その3
ある日、旅人が歩いていると、目の前に、巨大な岩がありました。
旅人は、岩に向かって「じゃまだ、どけ」と言いましたが、当然、岩はどきません。
言葉が通じないのかなと思って、いろいろと言葉を変えてみましたが、ピクリとも動きません。
そこで、旅人は、岩を押してみました。
それでも、ダメです。
段々、腹が立ってきて、「みんなの邪魔になるだろうが!」と、蹴ったり叩いたりしましたが、岩には通用しません。
「どかないと、爆破するぞ!」と脅しましたが、動きません。
旅人は、悔しくて仕方がありません。
そして、とうとう本当には爆破してしまいました。
ところが、岩の一部が破壊されたことによって、道は十分通れるのに、旅人は、まだまだ気が治まりません。
応援を呼んで、さらに岩を爆破し続け、疲労し、飛び散った破片で傷ついていきました。
その様子を見ながら、多くの旅人は、岩を避けて遠回りしたり、ロッククライミングをして楽しみながら、岩を乗り越えていったりしました。
旅人が、岩と格闘しているのを、遠くでお弁当を食べながら見ている人もいました。
旅人は、そんな人にも腹を立てました。
「せっかく俺が、皆の為に岩を動かしてやっているのに!」
と、怒りが収まりません。
疲れ果てて、とうとうそこに座りこんでしまいました。
岩を迂回したり、乗り越えていったりした旅人達は、もうずいぶん遠くまで行ってしまったというのに・・・。
岩を動かすことは、変わらない他人を変えようとするようなものです。
他人を変えるのではなく、自分が、意地を張らずに、あえて遠回りしたり、乗り越えたりすることで「本当の目的」に、早く辿り着けるのかもしれません。
元々、旅人にとっては、そこは単なる道の途中で、目的地は別にあったのですから・・・。(終わり)
・・・
明日は、ミルトン・エリクソンという有名な心理学者とあるおばあさんの実話です