89)過労自殺を考える(褒め言葉の効果:脳を刺激、意欲を引き出す)

以前過重労働のためにうつ状態になって相談を受けた人から、上司の対応について話を聞いてなるほどと思ったことがある。 

その人は、深夜残業や休日出勤が続き、心身ともに疲れ果てて仕事を休まなければならなくなった。

休職するまでに追い詰められたのは単に仕事の負担だけではないとその人は話していた。

むしろ上司の対応が精神的に自分を追いつめたのだという。

上司は、その人が働いているのを横目に先に退社するし、休日に出社することもほとんどない。

しかし、それは仕事の内容からしてやむを得ないという。

その人の仕事は極めて専門的で、良く理解していない上司がいるとかえって迷惑に感じる。 

負担になったのは、退社時に何も声を掛けない上司の態度。

せめて「がんばっているね」とか「助かるよ」という声かけをしてほしかった。

それがないことが、仕事の辛さに輪をかけたのだという。

この話は職場や家庭での人間関係を考える上で大事だ。

脳の中に報酬系と呼ぶシステムがある。

自分が何かに取り組んで達成できると報酬系が刺激され、やる気が引き出される。

すぐに成果が上がらなくても楽しくなくても、報酬系が刺激される。 

ところがこの上司のように何も声かけがないと、自分がどのように思われているかが気になって、仕事への意欲や集中力が落ちる。

思うように仕事が進まず、自信も無くなってくる。 

このように、周囲からの声かけひとつで意欲が変化するし、精神的な不調を引き起こすことさえある。