不将不迎…今を大切に(その二)
不将不迎…今を大切に(その二)
中国古典の「荘子」応こう鄭編に、「不将不迎」という言葉があります。「将らず、迎えず(おくらず、むかえず)」である。理想的な人間の心の持ち方としては、将らず(過ぎ去ったことをくよくよしない)、迎えず(将来のことを取り越し苦労しない)という考え方を持ち、どんな状況にも対処できるよう努める、とよいと言っています。
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この考えは、イエス・キリストや釈迦の教えにも通じています。
イエスは「明日のことを、思いわずらうな。明日のことは、明日自身が、思いわずらうであろう。一日の苦労は、その一日だけで十分である。」と言った。
釈迦は「過去を追うな。未来を願うな。過去は既に捨てられた。そして未来はまだやって来ない。だから、現在の事柄を、それがあるところにおいて観察し、揺らぐことなく、動ずることなく、よく見極めて実践せよ。ただ今日なすべきことを熱心になせ」と言った。
トルコの諺になると、こんな言葉まであります。「明日出来ることを今日するな!」
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「過去や未来に拘るな」と言うことは「手を抜いて良いぞ」と言っているわけではなく、既にお察しの通り「今日の課題を全力で行い、今日の目標を達成することに集中して欲しい」と言っているのです。
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私達は、嫌なことがあってやる気が出ない時、「(今考えていることが)一体何になるの?」「不幸を嘆くだけで何になる?」・・・
その答えが「何にもならない」のなら、考えるだけ無駄だと思いませんか?
それに実は「何にもならない」のではなく、「嫌な気持ちになる」や「不幸になる」だけなのです。
しかし、その答えが「何か良い方向へ向きそうだ」なら、「ではどうしたらいいか?」と続ければ良い。このように考えられれば、嫌な気持ちになる考えをしてしまったことも「いいきっかけ」になると思います。
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今、大河ドラマ【真田幸村】で話題の「信州」に、「信州の鎌倉」といわれる塩田温泉があります。年配の方はご存じだとおもいますが、「愛染かつら」で有名になった「かつら」の木があるところです。そこのお寺の一つに、龍光禅寺があります。
紅葉で奇麗なある秋の日訪れました。その山門の入口に次の言葉がありました。
『大切なのは かつてでもなく これからでもない
一呼吸 一呼吸の 今である』
明日はまだ来ていない。過去は終わった。我々が、悔いの無いように生きるには、まさに今日と言う日を大切に生きることが大事であると思います。